大切な本

食べるばかりで、作らない私が大切にしているケーキの本がある。
もう絶版になってしまった本だ。
著者はプロではなく、普通の主婦の方で、食べ盛りのお子さんのために作っていた家庭的なケーキが中心の本だ。

本を作るにあたっては、電気オーブンで作ることに配慮して、助手の人たちとレシピを一から見直した労作だ。

そんな優しさの詰まった本だが、ケーキの名前が、火山の噴火ケーキとか、メルヘンでユーモアあふれた名前でつけられていて、読んでるだけで、楽しくなる本なのだ。

もう20年以上になるが、出版記念のパーティーに参加したことがある。
著作のケーキをファンのみんなで作り、著者をお迎えしたのだ。
著者の方はもちろん、助手の方たちも、泣いて喜んでくれた。

私にとっては、大切な思い出とともにある本なのだ。

その本は、絶版になっているから、アマゾンでは、1円とかで売られていて、結婚や引越しなどで、本を紛失してしまったので、改めて買ってみた。

三冊あり、一冊はデコレーションケーキ。二冊目はカントリーケーキ。三冊目は、パイとクッキーとデザートと、いろいろなバリエーションがある。著者は、アメリカ人の夫を持つ先生に習ったそうだ。男性も食べやすいケーキも多数作っており、子供から、いろんな方が食べられるようになっている。

子供がある程度大きくなったので、また、作ってみたいとも思う。
著者のケーキを、ファンで作ったときは、何日も、通いつめて、若かったなあと思う。
写真のようにできたときは、歓声も上がったりもした。
レシピどうり作り、オーブンの温度を守れば、ほぼ成功する。

著者のあとがきによると、著者の家にお手伝いに来ていた娘さんにケーキの手ほどきをして、娘さんはしっかりケーキの作り方を学び、縁談が持ち上がったときに、相手の方にケーキを焼いてあげたら、是非にと請われて結婚が決まったそうだ。著者の方は、恋のキューピットになった気分だったと書かれている。

著者のすごいところは、ケーキ作りだけでなく、住み込みで働きに来ていたお嬢さんに、家事やケーキのこと以外にも、お茶やお花を習わせて、娘として、一人前にして、嫁に出したところだ。
昭和9年生まれの著者だが、昔の人の考えだったのだろう。
息子さんも二人いて、息子さんと過ごせる時間も今しかないと、毎日ケーキを焼いて、息子さんの帰りを待っていたそうだ。息子さんたちも、「今日のケーキはなあに?」と、胸を弾ませて、楽しみに帰ってきていたそうだ。

そんな著者の愛情詰まったケーキを、私も娘に作ってあげたい。